そのキス、契約違反です。




「ねえ。なんで普通でいられんの?」



それでもその鋭い視線はやっぱり、敵意じゃなかった。

純粋な、疑問。


………普通でいられるわけ、ないでしょ。


私が今までどれだけあの日のことで悩んでたと思ってるの。

銃を持てなくなった理由だって、全部、あの夜が原因だ。


普通じゃないから、こんな仕事をしてる。

普通じゃないから、今もこうして巻き込まれてる。



でも、きっと私は、律がいたから戻れただけだ。


そばにいてくれた。

引きずり上げてくれた。


悠真のそばには、そういう存在がいなかっただけ。


私だって、たまたまなんだ。

律がいなかったら——今も、暗い場所で立ち止まっていたかもしれない。



「あの時解放されたと思ったのに、俺はもう普通にはなれなかった。力と恐怖で支配するのが嫌でも体に染み付いてる。このやり方しか知らない。」

「……。」

「君を手に入れて、首領を超えて、そしたら答えが見つかる気がした。単純に君に興味があるのもあるけど」



ぞっとするほど、身勝手なのに。


それでも、完全には憎めない。

私はゆっくり息を吸った。


この人は、普通じゃない。
でも、完全な怪物でもない。

……だからこそ厄介すぎる。