そのキス、契約違反です。






「あの人のせいで俺の人生も価値観も全部歪んだ。でも、俺はあの人を超えることも殺すこともできなかった。」



悠真は淡々と言葉を続けた。


この人は、好きで Nocturne(ノクターン)にいるわけじゃない…ってこと?



「だから、君が首領を撃った日。君を見た時……安心したんだ」

「……安心?」

「同類がいるって」



悠真は口元だけ、ほんのわずかに歪める。



「家族を殺されて怒りのままに引き金を引いて。組織を潰すためなら、人を傷つけることも厭わない」



……思い出したくないあの日のこと。

悠真は全部、知っている。


「その頃の君は感情も、善悪も、全部置き去りにしたみたいな目をしてた」


否定は、できない。


あの時の私は生きてるとも死んでるとも言えなかった。

ただ、怒りと悲しみの感情のままに動いて。


「思ったんだ。ああ、やっぱりこうなるよなって」


悠真はようやくこちらを見る。

瞳が、静かに底を見せないまま。



「なのにさ」



吐き捨てるように呟いた。

テーブルに置かれた指先が、ぎゅっと力を込める。



「その数年後、偶然君を見かけた。陽の光の下で、誰かと話して、笑って。普通の顔で、普通の時間を生きてる君を。」



そこで、ふっと息を吐いた。

笑っているのに、どこか苛立ちが滲んでいるみたいで。