そのキス、契約違反です。




「……誰が行く?」



その問いが落ちた瞬間、考えるより先に体が動いた。



「俺が行く」



視線が、一斉に集まる。

一瞬の沈黙。



「若自ら、ですか…!?」

「危険すぎます」



みんなが驚くのも無理もない。

……今まで若頭という立場を嫌ってきたのはみんな知っている。

組のために自分から名乗りでることなんてこと今までなかったし、だいたい親父に言われて仕方なく、だ。


……でも、ここで彩葉の名前を出すわけにはいかない。

そんな理由…通るはずがない。



「……蓮」



先程まで黙っていた親父が、口を開いた。

じっとこちらを見て、探るような視線。



「どういう風の吹き回しだ」



俺は一瞬だけ、息を吸う。



「………俺には、行く理由がある。若頭としても。“神楽蓮”としても」



これ以上、取り繕うつもりはなかった。