そのキス、契約違反です。





「怪我の具合は?」

「もうほぼ治った」

「……そっか」



それだけ。

それ以上、何も言わない。



彩葉のことも、あの夜のことも、何一つ触れようとしない。


まるで、どこから切り出すべきかを慎重に探っているみたいだった。



……何しに来たんだ、こいつ。


だから、俺の方から口を開いた。



「用件は?」



榛名は、一度だけ小さく息を吐いた。



「………近いうちに、大きな動きがあるんだよね」

「…大きな動き?」



言葉の意味を測りかねて、眉を寄せる。



「最近裏社会で問題になってる…仮面闇オークションって、知ってる?」



その単語を聞いて、脳裏に引っかかるものがあった。

そういえば最近、組の中でも話題に上がっていた。


危険なオークション。

放置すれば、神楽組としても無視できない存在。