そのキス、契約違反です。




【side蓮】





彩葉がいなくなってから、数週間経った頃。


縁側に腰を下ろし、何をするでもなく庭を眺めていた。

冬に向かう途中の風は冷たくて、それが逆に頭の中を空っぽにしてくれる。



……いや、本当は違う。


空っぽにしたいだけだ。

考え始めると、どうしても、あいつのことばかりになるから。



まだ、慣れねぇな。


ここに彩葉が座っていたら、

きっと何も言わずに隣に腰を下ろして、

同じ方向を見て、同じ風を感じていた。



そんな想像をしてしまう自分に、舌打ちしそうになる。


──そのときだった。



「蓮くん」



聞き覚えのある声がして、顔を上げた。

敷地の入り口の方に立っていたのは、見覚えのある男。



「……榛名?」



一瞬、思考が止まる。


榛名も、彩葉が護衛をやめてからは学校に来なくなって。

2人とも連絡はつながらないし、会ってもいなかった。



「少し、話をしない?」



断る理由もなかった。

だからなんとなく招き入れると、榛名は俺の隣に腰を下ろした。