そのキス、契約違反です。





「でも………逃げてきちゃった。」



護衛として失格だから。

そう理由をつけたけど。

一番はもう、失うのがこわいから。


Nocturne(ノクターン)はまた動き出している。

……もし私が、本当に決着をつけることができたら。



ポケットから銃を取り出し、側面を指でなぞる。



「私は………誰も殺さずに、全部守りたい。」



こんな仕事をしていて、裏社会に関与していて、無茶だって分かってる。

綺麗事だって、分かってる。


でも、それが私のやり方だ。



「正直まだ整理ついてないけど…もう次の任務が始まるんだ。きっと、危険な任務」



息を吸って、吐く。



「でも、私行くよ。今度はきっと……前を向くために」



墓石にそっと手を置くと、冷たさが指先に伝わってきた。

お母さん、お父さん。



「ちゃんと、生きるから」



立ち上がると、空の色がほんの少し明るくなっていた。


そろそろ準備しないと。

オペレーション:lux(ルクス)の実行日までは、もう時間がない。


私は最後に一度だけ振り返ってから、背を向けた。


過去は置いていかない。

でも、抱えたまま歩く。



それが今の私にできる、唯一の前進。