そのキス、契約違反です。

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夜明け前の空は、いつも中途半端な色をしている。

まだ少し薄暗い。

私はこの時間が、あまり好きじゃない。



イージス本部の敷地内にある墓地は、静かだった。

ここに眠っているのは、任務で命を落とした人たちとその家族。

公には存在しない人間たちの、唯一の居場所。



私はその中の一角で足を止める。

──父と母の名前が刻まれた墓石。


花も、線香も、きちんと手入れされている。

誰かが定期的に替えているらしい。

きっと、それも「仕事」なんだろう。




あの日。

自分の手で、終わらせたと思っていた。




それが違ったと知った今、

胸に残っているのは安堵でも救済でもなく、
もっと重たくて、扱いづらい感情だった。


仇を討ったという事実。

その罪を引き受けて生き続ける覚悟。

それが、最初から私のものじゃなかったなんて。



……でも。




「……だからって、全部嘘だったわけじゃないよね」




ぽつりと呟いた声は、墓地の空気に吸い込まれていく。

私は確かに、銃を持った。

私はゆっくりと墓石の前に膝をつく。



「……ごめんね」



何に対する謝罪なのか自分でもよくわからない。



「私ね………… 好きな人が出来たよ」



誰にも深入りするつもりのなかった人生だったのに。