そのキス、契約違反です。




そう思いかけて、すぐに首を振る。

 

違う。

 

それに、律もずっと抱えてきたんだ。


私が“殺したと思って生きている”ことを知りながら、

極秘任務だから、黙っていなければならなかった。

 

それでも、私が取り乱した時はいつもそばにいてくれた。


何も聞かずに、呼吸が落ち着くまで付き合ってくれた。

今だって、そう。

 

それって……。

 

すごく、残酷な役回りだったはずだ。



「……っ、ごめんね……律」



ようやく出た言葉は、情けないほど小さくて。



「ちょっと、もう謝るの禁止。……せめて、“ありがとう”とかにして?」



むぎゅっと、ほっぺを掴まれる。



「次また“わたしのせいで…”とか言ったら、無理矢理その口塞ぐからね」



…お、横暴……!



まだ、全部は受け止めきれない。
きっと、これからも苦しい。

それでも。



「……ありがとう。律」



私は、もう一度、前を向ける気がした。