そのキス、契約違反です。



「それは、彼女個人の問題だ。」



冷たい言葉。

けれど、それが“ボス”の判断基準だということも分かっている。



「彼女を失うことは Aegis(イージス)にとっても不利益ですよね。このまま放置しておけば、そのうち壊れてしまう」

「シークレットオペレーションを開示するのは、重大な規律違反だぞ」



脅しにも、忠告にも聞こえる声。

俺は間髪入れずに答えた。



「構いません。罰なら何でも受けます」



迷いなんてない。


机越しにボスをまっすぐ見据えて、視線を逸らさない。


長い沈黙のあと。



「……開示の許可は、 彩葉(アイリス)本人にだけだ。それ以外は認めない」



封筒が、机の上を滑ってきた。



「………ありがとうございます。」



深く、頭を下げた。


本当は全てを外へ開示したかった。



それでも、本人が知るきっかけが一つでも増えるなら。

このまま何も知らずに苦しみ続けるより、ずっといい。


封筒を受け取った指に、無意識に力が入っていた。