そのキス、契約違反です。




「…まだ何も言ってません」



俺がそう言うと、ボスはふっと息を吐く。



「君の考えてることぐらい分かる」



まあ、多分全部見透かされているんだろうな。

それでも、ここまで来た以上引き下がる選択肢はない。



「なら、前置きは無しです。当時の報告書を開示してください」



真正面から切り込むと、ボスの目が細められる。



「あれを極秘任務にした理由は分かっているだろう? Nocturne(ノクターン)がまた動き出している今、わざわざ開示するわけがない」



…分かってる。

頭では、嫌というほど。



「だからこそですよ、彩葉が狙われてるんです。開示すれば、あいつらの狙いは俺になる」

「……」



貴方が言ったんですよ。

大事なものはどんな手を使っても守れって。



「彩葉は自分が撃ったと思い込んでる。そのせいで……最近も、殺すつもりがない場面ですらまだ銃を持てない」



…彩葉は、人を撃つのは向いてない。

優しすぎるから。


ほんの一瞬の躊躇。

それが命取りになる世界に、彩葉は立たされている。



「この前の護衛任務を辞退してからの彩葉の様子、知ってますよね?あの状態でlux(ルクス)の任務なんて危険すぎると思いませんか?」



隠蔽なんてしていなければ。

彩葉が過去に囚われることも。

狙われ続けることも。
自分を責め続けることも。

なかったはずなのに。