そのキス、契約違反です。



✳︎





Aegis(イージス)のボスは、正直掴みどころがない。


普段はやたらとテンションが高くて、冗談みたいな軽口を叩く人だ。

作戦会議の前にコーヒーをこぼして笑っている姿なんてそこらの兄ちゃんと大差ない。


でも、一度“仕事”の話になった瞬間空気ががらりと変わる。


視線が鋭くなって、冗談が一切通じなくなる。

その一瞬の切り替えを俺は何度も見てきた。


ちなみに本名は俺らも知らない。

ボスの、コードネームは Leo(レオ)


でも、名前よりも“ボス”って呼び方が一番しっくりくるから結局みんなそう呼んでいる。



俺は今、そのボスの部屋で一人きり。

重厚なデスクを挟んで、真正面に立っていた。



「君がその目をする時は、何か企んでいる時だね」



軽い口調だけど、その目はすでに“仕事の顔”だった。

俺はごくりと唾を飲み込む。


怯むな。
ここで怯んだら、全部終わる。



「“シークレットオペレーション: Dazzle(ダズル)”について」



その言葉に、空気が一瞬で張りつめた。

さっきまで机に預けられていたボスの指が止まり、視線が俺を射抜く。

一拍置くことすらなく、即答だった。



「却下だ」



あまりにも早すぎて、思わず眉が動いた。