扇風機を参考に作った改良版である。
現存している送風機とは羽根の形が違うだけだけど、それだけで扇風機感がすごく伝わってきた。
大きさも安売りの扇風機とほとんど変わらないし、なんだかこれを見ているだけで夏の訪れを感じる。
日本にいた頃も扇風機を押し入れの中から出して部屋に置いた瞬間、「夏が来たな!」という感覚になったものだし。
セミは嫌いだけど鳴き声は好きだったので、それを脳裏に思い出して懐かしんでいると、ロビンがまじまじと送風機を見つめていた。
「ア、アウル様の魔力量がとんでもないという話は聞いていましたけど、まさか本当に休憩なしで送風機をひとつ作ってしまうなんて……! しかも羽根の形もここまで複雑に変形させたのに。お疲れではありませんか?」
「じぇんじぇんへーき!」
魔力は操作するだけでも相当な量を消費する。
それを体外に排出して素材の加工に用いるというのは、さらに多大な魔力を必要とする。
そのため魔道具は簡単なものをひとつ作るのに、腕利きの魔法使いでも休憩を挟みながら〝丸一日〟はかかると言われているのだ。
だというのに複雑な魔道具を手掛けて、その作業を一息で終わらせたというのにピンピンしているのは奇怪に映っているだろう。
アウルも顔には出さないが、自分自身に大層驚いている。
(やっぱりこの体にはとんでもない量の魔力が宿ってるんだな。改めてこの才能を持っていてよかったと思う)
心中でそう呟いていると、ロビンが送風機の形状を観察した後こちらに問いかけてきた。
「羽根の形以外は、私も見たことがある送風機となにも変わりはありませんね。これで強い風を起こすことができるのですか?」
「そだよー。しゅっごくすずしいから、きたいちてて」
上手くいっていればの話だけれど。
送風機はスイッチを押せば起動して羽根が回転し始める。
風の強さは選べず首振り機能なんかもない。この辺りは前世で使っていた日本の扇風機の方が圧倒的に便利だ。
現存している送風機の設計図がシンプルなものだったのでここは仕方がないだろう。
魔物の素材を追加して工夫すればおそらく細かい機能を付け足すことはできるだろうが、魔物の素材の種類や効力についてはまだ勉強不足なので今のところはこれが限界である。
ただ、前世の日本で使っていた扇風機より明らかに優っている点もある。
それは動力源が電力ではなく、魔力ということだ。

