まさに求めていた味と口当たり。アウルは目をキラキラと輝かせた。
「お、おいちい……! すっごくおいちいでしゅ!」
また大好きなホイップクリームに出会うことができた。
この世界に来てホイップクリームがないと知った時は、二度と味わうことができないだろうと諦めてしまったが、その気持ちを乗り越えて挑戦してみて本当によかった。
それもこれも、甘味欲を刺激してくれたクロウのおかげである。
そんな彼も、アウルが恍(こう)惚(こつ)としている様子を見てホイップクリームが気になったのか、スプーンで掬って一口食べた。
瞬間、闇夜のように暗い瞳が見開き、ハイライトが灯る。
「なるほど、これは悪くない。よもや生クリームがこのような食感のスイーツになるとはな」
クロウの感情が揺れ動く姿を初めて見たかもしれない。
それほどまでにホイップクリームの美味しさが彼の心を感動させたようだ。
自分の大好きなものが尊敬する人に認められて、アウルは密かに充足感を得る。
人知れずニヤニヤしていると、不意にクロウに問いかけられて少し焦ることになった。
「アウル、なぜこれの作り方を知っていたんだ?」
「あっ、えっと……よんだほんのどれかに、ホイップクリームがかいてあって……」
「そうか、本から得た知識か。よく執務室で多種多様な本を読んでいるからな」
咄嗟の言い訳だったけれどなんとかごまかせた。
ホイップクリームの存在と作り方を知っていることについて、言及されるのは自明の理であったはずなのに、早く作りたすぎて頭から抜けてしまっていた。
(前世から引き継いだ異世界の知識です、なんて言えないもんなぁ)
異世界から転生してきたということは、やはり誰にも伝えないようにしようと心に決めている。
事なきを得て密かに安堵していると、不意にクロウがまた目を細めて見つめてきていた。
何事かと思って首を傾げていると、次いで手を伸ばして指先でアウルの口の端を拭ってくる。
そこにホイップクリームがついていたらしく、クロウが呆れたように微かなため息を吐いた。
「落ち着けと言ったばかりだろう。世話の焼けるやつだ」

