振り向くとそこにはクロウがいて、アウルと目が合った彼はため息を吐きながら歩いてくる。
「使用人らが掃除や仕込みの手を止めて、いったいなにを眺めているのかと思えば、渦中にアウルがいるとはな……。ここでなにをしている?」
「ちょっと、やってみたいことがあったんでしゅ」
いつも真面目に働く使用人たちが、珍しく手を止めていたからクロウは怪訝に思って見にきたらしい。
そんな彼はボウルに入っているものとアウルが握っているクリーム付きのフォークを見て、ここでなにが行われていたのかすぐに悟った。
「生クリームか。冷やしながら混ぜていたようだが、これがいったいなにになるというのだ?」
「ホイップクリームでしゅ! ふわふわであまくて、パンとかパイにすっごくあいましゅ!」
テンション高くそう説明をすると、クロウは今一度アウルを見て目を細めた。
次いでアウルの顔に手を伸ばし、指でさっと頬を拭ってくる。
どうやら生クリームを混ぜていた時に散って頬についていたらしい。
「探求心は結構だが、厨房を散らかされたり服を汚されたら使用人らも迷惑するのだぞ。やるにしても少しは落ち着け」
「ご、ごめんなしゃい」
「で、これを混ぜればいいのだな」
「えっ? はい、そうでしゅけど」
クロウはアウルの持っていたフォークを取ると、代わりにボウルの中の生クリームを混ぜ始めた。
これ以上散らかされたくないから、代わりにやってくれている。
というよりは、アウルを放っておけないからと優しさで代わってくれたのだろう。
するとアウルの幼い手つきとは違って、華麗な手捌きで生クリームが混ぜられていった。
説明をしていないのに空気を含ませるように、かつ水を入れないように混ぜてくれて、ものの一分ほどでホイップクリームが完成する。
フォークを引き上げたクロウは、角が立ったクリームを見て興味深そうな声をこぼした。
「ほう、生クリームがここまで形になるとはな。これぐらいでいいのか?」
「はい、かんぺきでしゅ!」
久々に見た最愛のスイーツを前に、アウルは思わず喉を鳴らす。
辛抱たまらんと言わんばかりに近くにあったスプーンを取り、こんもりと掬って忙しなく口に運んだ。
刹那、ふわふわの食感と濃厚なミルクの風味が口一杯に広がる。

