「氷水を入れたボウルの上に、またボウルを重ねた? これでいったいなにをするおつもりなのですか、アウル様?」
「なまクリームいれりゅー」
下の氷水のおかげで上のボウルの底がキンキンに冷えてきたので、アウルはそこに生クリームを入れる。
それから砂糖を加えて甘味を調整し、泡立て器の代わりにフォークを用意して小さい手でしっかりと握りしめた。
あとは空気を含ませるように、精一杯フォークでぐるぐると混ぜるだけ。
「いくじょー!」
アウルはフォークを刺し込んで、短い腕で懸命にかき混ぜ始める。
カッカッカッとボウルとフォークがぶつかる音が厨房に響き、その様子を使用人たちは不思議そうに眺めていた。
そんなみんなをすぐに驚かしてやるぞ! と意気込んで生クリームをかき混ぜること、およそ五分。
生クリームは、生クリームのままだった。
「はぁ……はぁ……ちゅ、ちゅかれた~」
アウルは思わずフォークを手放してフェンリルに寄りかかる。
生クリームの泡立てが思った以上にきつい。
泡立て器はフォークで代用できると聞いたことがあったけど、子供の腕力では少々力不足のようだ。
氷水の水を少しでも入れたら上手なホイップクリームができないため、水を入れないように慎重になっているのも滞っている理由のひとつである。
動物性の生クリームだからすぐに泡立てられると思ったのだが見通しが甘かった。
「あの、アウル様? こちらをかき混ぜればよろしいのですか? でしたら私が……」
アウルの疲れた様子を見たロビンが、代わりに自分がやろうかと提案しようとする。
できれば自分で最後まで作りたかったけれど、これ以上厨房のスペースを占領するのも忍びないと思ったので、アウルは諦めてロビンに任せようとした。
するとその時……
「いったいなんの騒ぎだ?」
厨房に面した廊下から、男性の無感情な声が聞こえてきた。

