転生して捨てられたボク、最恐お義兄さまに拾われる~無能と虐げられたけど辺境で才能開花⁉~

 また遅れてぽつぽつと、アウル・ダスターの残りの記憶が流れ込んでくる。
 この転生は、神様が恩情をかけてくれたわけでもお詫びなんかでもない。
 父のドレイク・ダスターの怒号と、激(げっ)昂(こう)した表情が脳裏に蘇ってくる。

『魔力に色がない無属性だと!?!? この無能の役立たずが! 我がダスター家の顔に泥を塗りおって……!』

 そう、この家でアウルは、無能の落ちこぼれだと蔑まれている。
 三歳になってすぐの頃。
 魔法使いの適性を確認するための魔力検査を受けた。
 その時に判明したのは、アウル・ダスターの体内に宿る魔力には〝色がない〟という残酷な事実だった。

 本来魔力には『色』があり、その色によって使える魔法の属性が異なる。
 赤い魔力なら火属性の魔法が使えて、青い魔力なら水属性の魔法が使える、というように。
 しかしアウルの魔力には色がなく、それすなわちアウルは魔法を使えない人間ということになる。
 魔法使いの名家に生まれながら。
 そのせいでアウルは実力主義の父から用無しと断定されており、まるで期待されておらず常日頃から叱責を浴びせられている。それだけならまだしも、父の機嫌が悪い時は根性を叩きなおすという名目で冷水を浴びせられたり、目が合っただけで生意気だと言われて容赦なく頭を叩かれたりもしている。
 屋敷の人間たちからも落ちこぼれだと蔑まれていて、家柄は恵まれながらも境遇は最悪だ。

「果実ジュースをお持ちしました。これで少しは気分もよくなるのではないでしょうか」

 戻ってきた使用人は淡々とした様子でグラスにジュースを注ぎ始める。
 この使用人も仕事としてアウルの面倒を見ているだけで、本気で心配している様子は窺(うかが)えない。
 先ほどから気だるそうに話しており、そもそも侍女がおらず使用人が世話をしているのがその証拠だ。
 この屋敷内で唯一の味方は、母のマーレット・ダスターだけだ。
 母だけは才能がなかったアウルにも優しく接してくれた。
 父に叱責されているところを何度も庇(かば)ってくれて、侍女をつけてもらえなかったため付きっきりで面倒を見てくれた。
 しかしその母も……

「まあ、先日お母様が亡くなられたばかりなので、ご気分がすぐれないのも無理はありませんが」

「あっ……」

 使用人のその言葉で母の死を思い出してしまい、不意に涙が滲(にじ)んでくる。