「アウルにやったものだ。好きにしろ。だが、夕餉も近いから程々にな」
やったーと見るからに嬉しそうに喜んだアウルだったが、丸ごと一個のアップルパイを改めて見て眉を寄せる。
どのようにして食べるかは決めていなかったようだ。ホールで齧(かじ)るのも行儀が悪いし。
するとクロウはアウルが届きそうにないところに果物とそれ用のナイフを見つけて、後者だけを取ってくる。
アウルのために一切れだけ切り分けて渡すと、「あいがとー!」と微笑んでアップルパイを受け取った。
そして焼き立て熱々のアップルパイに、小さな口でがぶっとかぶりつく。
ザクザクッ!
香ばしく焼き上げられたパイ生地の音が部屋の中に響き、同時にアウルの至福の声が耳を打った。
「はぁ~、おいちぃ……!」
「……そうか」
リンゴのフィリングを口の端にくっつけながら、満面の笑みを浮かべるアウルにまた言い知れない感情を抱く。
胸の内から湧いてくる、ぽかぽかと温かい気持ち。
その気持ちの正体に気付くよりも早く、二度目のザクザクという音でフェンリルが飛び起きた。
音で食べ物だと察したようで、すかさずタタタとアウルのそばに駆け寄る。
「ちょっとだけねー」
アウルはそう言ってフェンリルにも分け与えると、口に合ったのか狼らしい耳がピンッと張った。
そしてもうひとつせがむように右前脚でアウルの脚を引っかき始めて、「ちかたないなー」と呆れながらまた欠片を与える。
見た目は犬というか狼みたいな感じだが、元々は魔物の上位存在である精霊なので食べる物は人間と同じで大丈夫らしい。
そのことを思い出しながらアウルがフェンリルにアップルパイを食べさせる様子を眺めていると、不意にアウルがこちらを見て手に摘まんだ欠片を伸ばしてきた。
「はい、クロウおにいしゃまも! あーん! とってもおいちいので」

