転生して捨てられたボク、最恐お義兄さまに拾われる~無能と虐げられたけど辺境で才能開花⁉~

 ただの寝起きの割にかなりぼんやりとしているのは、記憶が混在しているのと熱のせいだと遅れて理解した。

「眠気覚ましに冷たい果実ジュースでもお持ちします」

「うん、あいがと……」

 幼児だからか、うまく呂律が回らないことにもどかしさを感じながら、部屋を出ていく使用人の背中を見届ける。
 それから翼は、いまだにぼんやりとする頭で考えた。

(にしても、どうしていきなり異世界になんて来たんだろうか?)

 白鳥翼は趣味としてアニメや漫画を嗜(たしな)んでおり、この手の展開を創作物の中で何度も見てきている。
 そして大抵の異世界転生や転移の作品では、転生や転移になにかしらの要因があるのが常だ。
 前世で善行を積んだから神様がご褒美に転生させてくれたり、異世界の危機を救う勇者として異世界側の召喚者から呼び出されたり。
 しかしそんな様子は微(み)塵(じん)もない。神様と出会った覚えもなければ、周りに召喚者だっていない。

(過労で命を落としてしまったから、神様が恩情をかけて転生させてくれた、とか?)

 前世では不幸まみれのろくでもない人生を送ったので、二度目の人生は異世界で幸せいっぱいに暮らせよというお達しか。
 もしくは不幸な目に遭わせすぎたから、お詫(わ)びに異世界に転生させてくれたとか。
 こうして貴族の名家に生まれていて、家柄に恵まれているのがその証拠……

(……いや、違う)