「貴族家にいた頃に大人たちから虐げられていたからではないか」
「大人に逆らうのを恐れている可能性ももちろんありますが、見たところそんな気配もないんですよね。なんだか達観していて、どこか子供らしくない方で……」
大人の余裕みたいなものを端々に感じる。
クロウもその違和感は前々から抱いており、アウルのことを普通の子供とは少し違うかもしれないと心のどこかで思っていた。
だからこそだろう。氷室の高温化が発生して頭を悩ませていた時、五歳児に話の内容がわかるはずもないと思いながらも、悩みを打ち明けてしまったのは。
「ともあれ、我儘を言ったりなにかをねだっているところは見たことがありませんね」
「そう……か」
ストークからも有益な情報が得られず、クロウは心中でため息を漏らす。
しかし不意にストークが、なにかを思い出したようにハッとした。
「あっ、でも確か……」
「なんだ? なにか思い出したか?」
「いつの日だったか、焼き立ての〝アップルパイ〟を食べたいとアウル様は仰っていました」

