あの時、褒めてくれる形で頭に手を置いてくれた。
前世と現世、どちらも家族との仲が悪く、現世に至っては半ば虐待のような扱いを受けていて子供時代に家族から褒められた経験がろくにない。
だからあんな風に褒められたのは新鮮で、それが尊敬するクロウからのもので素直に嬉しいと思った。
もう一度、頭に手を置いて、そして今度は撫でてほしい。褒美と言われてそんなことを思い浮かべたアウルは、気持ちのままに口を開きかけた。
(……いやいや、三十超えてなに考えてんだか)
咄嗟に冷静になって心の中でかぶりを振る。
そもそもこれは褒美が欲しくてしたことではない。
というわけでクロウを見上げながら首をふるふると横に振った。
「いまはとくにないでしゅ」
「なにもないのか? 新しいおもちゃや本も……?」
「はい。これはひろってくれたおんがえちなので、ごほうびはいりましぇん」
「そう……か」
なにを思ったのだろうか、クロウは声を先細りにしながら目を伏せる。
一方でアウルの決意は固く、これは森に捨てられていたところを助けてくれた恩返しだと自分に言い聞かせた。
今回の件でその恩の〝一部〟を返せたというだけなので、それでご褒美を要求するのは忍びない。
それに領民たちからすでにこれだけのお菓子やおもちゃをもらっているのだから。
アウルは満足げな顔で感謝の品々を物色し、その姿を少し浮かない顔でクロウは見つめていた。

