溶岩スライム(アウル命名)を討伐し、アウルとクロウはすぐに屋敷に戻った。
そこで待っていた調査隊の人たちと会い、くだんの魔物を倒したことをクロウが伝える。
すると彼らは口をあんぐりと開けて固まってしまったが、すぐに我に返ると各地の氷室の様子を確かめにいった。
例の魔物が討伐されたことで、本当に領内の氷室の高温化が解消されたかを。
それから三日後、調査隊から各地の氷室の異常が解消されていたという報告を受ける。
あの溶岩みたいな魔物が原因と睨んだのは正しかったようで、氷室の温度はすっかりひんやりしたものに戻っていたそうだ。
というわけで、ここからはアウルとフェンリルの出番である。
予定通り氷が不足している村に赴き、フェンリルの力で氷を生成することになった。
付き添いとしてクロウとストークが同行し、村人たちにも事情を話してアウルとフェンリルの様子を見守られることになる。
「あの子供って確か……」
「少し前にクロウ様が拾われて屋敷で育てられている……」
「氷を作ってくれるって本当なのか?」
村の氷室は村人たちが共有している。
そこに氷を補充してくれるとなれば、見物人たちがぞろぞろと集まってくるのは必然だった。
そして疑惑の視線が集中することも。
魔法に氷の属性がなく、氷を作れる魔道具だって存在しない。
それでどのようにして五歳児の子供が、村共有の大きめの氷室に充分な量の氷を作ろうというのか。
期待させた分、失敗した時の反動が怖いと思って緊張してしまうけれど、クロウが声をかけてくれて気持ちが軽くなる。
「いけそうか、アウル?」
「はい、がんばりましゅ! やっとみんなのやくにたてしょうだから」
意気込みをあらわにした後、横に立つフェンリルと視線を合わせて頷きを交わす。
「フェンリルしゃん、いくよ」
「ガウガウ!」
アウルはフェンリルの体に右手をかざした。
そして最近掴み始めてきた魔力の感覚を探る。
ロビンの言葉を借りるならもやっとしたなにかを体の内側に感じて、それをフェンリルの方にゆっくりと流していく。
慎重に、丁寧に、掴んだ魔力の感覚を放さないように、右手からフェンリルに送っていくイメージで……
瞬間、フェンリルの白い体が、ほのかに〝光〟を放ち始めた。
「おぉ……!」
周りの村人たちの驚く声を聞きながら、なおも焦らず魔力を流していく。
やがてフェンリルから放たれる光が強まり、耳と尻尾がピンと立つと、フェンリルは鳴き声をあげながら口を開いた。
「ガウ!」
そこから白い冷気が漂ってくる。
その冷気は次第にフェンリルの前に集まると、雪のように積もって小山に似た形を作った。
直後、パキンッ!というガラスが割れるような音が響き、一瞬にして冷気が氷へと変化した。
「こ、氷だ! 本当に氷を作り上げたぞ!」
「なんなんだあの狼は!?」
「とにかくこれで氷不足を解決できる!」
小山ほどの氷山ができ上がって、村人たちは盛大に喜びの声をあげていた。

