魔力の色が二種類の人物は世界的に見ても珍しく、色が混ざり合って特有の属性も扱うことができるという。
クロウはそれに該当する稀(け)有(う)な魔法使いで、赤の炎属性、青の水属性、そして紫の闇属性が使えるようだ。
「闇属性の魔法は引力と斥力を操ることができる。目の前の空間に引力場を発生させ、同時に足元と後方に反発力を……」
説明の途中で、不意にクロウは言葉を途切れさせる。
なんだろうと思ってアウルがクロウの顔を見上げると、彼は呆れたようにかぶりを振っていた。
「と、子供に説明してもわかるはずがないか。今のは忘れろ」
幼いアウルに難しい話をしてしまい、自分自身に呆れているようだった。
アウルとしては中身が大人なので、ある程度は理解できる。
だからまだ話してほしかったけれど、変に言及すると怪しまれると思って口を噤(つぐ)んでおくことにした。
「じきに理解できるようになる。その時になったら改めて教えてやる。が、その頃にはこうして抱えて走るのは難しい歳になっているかもしれないがな」
クロウはそう言うと、一層足を早めて目的地へと急いだのだった。
場所はアウルとクロウが初めて出会ったブランチの森。
その奥地にあるという地下洞窟である。
馬車を使ってかなりの時間がかかったはずなのに、クロウの高速移動のおかげで十五分ほどで森へと辿り着くことができた。
さらに奥へと進み、くだんの地下洞窟なるものを発見する。
「着いたな。ここが話にあった地下洞窟だ」
「なんかあちゅい……」
「中に潜んでいる例の魔物の影響だろうな」
氷室の高温化を誘発しているらしい悪質な魔物。
洞窟の入口前だというのにその魔物の気配を熱として感じ取れてしまう。
調査隊の人が言っていた通り、かなり凶悪で危険度の高い魔物のようだ。
「体調がすぐれなくなったらすぐに報告しろ。では行くぞ」
「は、はい」
クロウに抱えられたまま、緊張した面持ちで地下洞窟へと入っていく。
中は光源がなくて暗闇だったが、クロウが炎属性の魔法で灯りを作ってくれて視界は確保できた。
しかし魔物の影響と思しき熱はどうすることもできず、ふたり揃って額に汗を滲ませながら奥へと進んでいく。
やがてドーム状になっている開けた場所に出ると、そこには異様な姿をした魔物が立っていた。

