「フェンリルしゃんは、おるすばんちてて」
「クゥン……」
一緒に色んな場所を見たり散歩などもしたかったが、さすがにふたりでついていくとなるとクロウの負担がさらに増えることになる。
フェンリルには悪いが留守番していてもらった方がいいとアウルは判断した。
フェンリルは寂しそうに耳を垂らしたが、待っていてという指示を理解し、ペタンとお座りをして留守番の意思を見せてくる。
そんな愛らしい契約精霊を「よちよち」と撫でた後、急いでクロウの後を追いかけて、屋敷の庭先のところで追いついた。
どうやら目的地まではクロウが抱えて走ってくれるようで、なにも言わずに抱き上げてくれる。
「子供を抱いた経験などないんだが、これで問題なさそうか」
「はい、だいじょうぶでしゅ!」
正直アウルも抱き上げられた経験が少ないので正しいかはわからなかった。
けれどクロウの抱え方に居心地の悪さは感じず、むしろ彼の表面化されていない優しさと思いやりが滲んでいると感じた。
「では、行くぞアウル。しっかり掴まっていろ」
「わ、わかりまちた」
庭先にいた使用人たちに見守られながら、アウルはクロウの肩にしがみつく。
瞬間、わずかな浮遊感と共に、クロウが空へと飛び上がった。
飛んでいる。いや、正確には〝跳んでいる〟。
飛行しているのではなく跳躍する形で、クロウは領都の民家の屋根をぴょんぴょんと渡り始めた。
(忍者みたいに屋根を伝ってる! どんな魔法使ってるんだこれ!?)
地面や屋根に足が着地しても、まったく衝撃がなく、まるで無重力の中を自由に跳び回っているかのようだった。
気付けば領都の門を越えていて、広大な草原を風を切って跳んでいた。
その気持ちよさに思わず声をあげてしまう。
「うわぁ! はやーい!」
「そこまで大したものではないがな」
クロウはこの移動に慣れているからかなにげない顔でそう言ってくる。
そこには心なしか、少しだけ得意げな雰囲気が感じられた。
「なんでこんなにはやいんでしゅか?」
「俺の魔力の色は赤と青。その色が混ざり合い紫色になっている。それによって使える闇属性の魔法で移動をしているんだ」
どうやってこんな高速移動を実現しているのか気になって問いかけてみると、新たな事実が判明する。
まさかクロウが魔力の色をふたつ持っている人物だとは思わなかった。

