転生して捨てられたボク、最恐お義兄さまに拾われる~無能と虐げられたけど辺境で才能開花⁉~


 フェンリルはそれを待っていましたと返すように鳴き声をあげる。
 そのふたりのやり取りを見ていたロビンが、勉強道具を片付けながら尋ねてきた。

「本日もクロウ様の執務室に行かれるのですか?」

「うん。クロウおにいしゃまのおへやに、よみたいほんいっぱいあるから」

 精霊記の一件があってからも、アウルは休憩時間になるとクロウの執務室に遊びにいっている。
 あの場所にはまだ読みたい本があるし、なにより居心地がいいし。
 ロビンもそれを知っているので、「いってらっしゃいませ」と言って部屋の扉を開けてくれた。
 そしてフェンリルとふたりで廊下を歩いていき、執務室の前に辿り着く。
 コンコンコンッ。

「入れ」

 もうアウルがやってくる時間帯や足音、ドアのノックの仕方などで顔を見る前から誰が来たかわかられてしまっている。
 クロウの声が聞こえると、フェンリルが手慣れた様子(口)でドアを開けてくれて、アウルは執務室に入るや元気に手を挙げた。

「またほんをよみにきまちたー!」

「あぁ、好きにしろ」

 すっかり定着したいつも通りのやり取りである。
 アウルは紙とインクとコーヒーの香りに癒やされながら、今日読む本を棚から選出する。
 そしてフェンリルが体を丸めて、通称『ワンモナイト』と呼ばれる寝方をした真ん中に、本を持ってきて腰かけた。
 寝ているフェンリルのお腹を背もたれにして、静かに本を読み始める。
 これが最近の執務室での光景。
 相も変わらずその部屋にはペンを走らせる音と本をめくる音、それから新しく追加されたフェンリルの寝息だけがささやかに響いていた。
 が、今日は少しいつもと違った光景がアウルの目に映る。

「……はぁ」

 なんと、あのクロウがため息を吐いていた。