いつも通り私室で勉強をしている最中のこと。
窓を開けて風通しをよくしているはずなのに、もわっとした暑さを感じてアウルはテーブルにもたれた。
この世界にも季節という概念が存在する。
日本の四季とまったく同じで、今はぽかぽかと暖かい春の時期だ。
ただ、最近は夏が近づいてきたため鬱陶しい暑さに悩まされている。
日本で生きていた頃も、暖かい春から夏に移り変わる時期は果てしない不快感があった。
いやでも、春もそこまで好きじゃなかったかもしれない。
気温自体は好ましい季節だったけれど、花粉症のせいで過ごしやすい時期とは言えなかったから。
だからこの世界にアウルとして生まれて、花粉症に悩まされることがなくなってからは、春とはこんな素晴らしいものなのかと感動させられたものだ。
ゆえに夏の鬱陶しさがさらに増したように感じてしまう。
この世界には前の世界のような冷房器具がほとんどないし。
確か扇風機に似た風を起こす魔道具はあったはずだけど、性能がいまいちで暑さ対策としては心許ないと聞いたことがある。
「へやをちゅめたくできるまどーぐは、ないんでしゅか?」
「そのようなものが発明されたら革命的ですね。ぜひ全国に普及してほしいものですよ」
あははと苦笑しながらロビンも暑そうに手巾で額を拭っている。
使用人たちはただでさえ暑そうな服装をしているから、なおのこと暑さをどうにかしたいと思っていることだろう。
最近では濡れタオルを首に巻いたり、井戸水を汲んで顔や足をつけて冷やしている使用人をよく見かける。
(日本でも昔の人たちはこうやって涼を取っていたのかな?)
だとしたら冷房がある時代に生まれて本当に恵まれていたのだと改めて思う。
同時にこの世界にもそういう画期的な道具が欲しいとも。
まあ六月や七月に三十度超えをしていた日本の暑さに比べたら、まだこの世界の夏は涼しい方だと言えるけれど。
ちなみに生家のダスター家にいた頃は、領地の場所的に気温がそこまで高くなることがない場所だったので、夏はそこまで暑さに悩まされた記憶はない。
「そろそろ休憩にしましょうか。お昼下がりで一番気温も高いですし」
「きゅうけいしゅる~……」
魔法に関する勉強本をバサッとテーブルに投げ出し、ぐでっと椅子の背もたれに寄りかかった。
その本をロビンが片してくれて、「あいがと~」と疲れ気味に言っていると、不意に右手にくすぐったい感覚が迸る。
見ると、フェンリルが「自分に気付いて!」と言わんばかりに右手を舐めていた。
どうやら勉強が一段落したとわかり、アウルに近づいてきたらしい。
そんなフェンリルの頭をさらさらと撫でた後、少し気力が回復したのでアウルは椅子からひょいと飛び降りた。
「フェンリルしゃん、いこっか」
「ガウ!」

