(病院に運ばれたわけじゃないのか? ていうか、アウルって誰だ? もしかして俺のことを言って……)

 そう思いながら部屋の一角に目を移すと……
 そこには姿見があり、ベッドの上に乗っている自分と思しき姿を見つけた。

「なに、これ……?」

 視界に飛び込んできたのは、三歳ぐらいの男児の幼体だった。
 およそ成人男性の体とは思えないほど、あちこちがぷにっとしている。
 頬っぺたや手はお餅みたいに真っ白で、もちもちぷにぷにという感触だ。
 しかも髪はさらさらで白に近い銀色。
 目はくりっと大きくて、サファイアが埋め込まれているかのように透き通った碧眼をしていた。
 労働で酷使された三十歳のくたびれた体はいったいどこに行ってしまったのか。
 明らかに自分の体ではないことに、翼は激しく困惑した。

(なにがどうなってるんだ……? なんで俺、こんなに幼くなって……)

 険しい顔をしていたからか、メイド服の女性が訝(いぶか)しい様子で顔を覗き込んでくる。

「アウル様? どうかなさいましたか?」

「アウ、ル……? アウルって、いったいだれのことを――」

 ――その時
 存在しないはずの思い出が、ぽつぽつと翼の脳裏に蘇ってきた。