転生して捨てられたボク、最恐お義兄さまに拾われる~無能と虐げられたけど辺境で才能開花⁉~

「ぼ、ぼくがよみたくて、えらんだえほんでしゅから……!」

 クロウが気に病むことではない。
 元々この執務室にある本は、前住人が残していったものらしいので全貌を掴めていないのも無理はないのだ。
 しかも絵本など大人が読むものではないので、クロウや屋敷の使用人たちが触れる機会もなかったことだろう。
 この件は誰にも責任がない。
 ただクロウからしてみたら、精霊記の存在に気が付けず、読み手の魔力を食らう悪魔の書物を不用意に子供に渡してしまった気持ちなのだと思う。
 罪悪感もひとしおのはずだ。
 その後悔を噛みしめるように歯を食いしばる中、クロウはもう一度アウルの顔を見て眉を寄せた。

「しかしまさか、精霊記を読んでも特に問題がないとはな。しかもたった五日で読破してこの調子とは、まったくもって信じられん」

「へん?」

「前代未聞と言えるだろうな。話に聞いた限りだが、過去に精霊記を最後まで読めた者はごくわずかで、全員が多大な魔力を持った一流の魔法使いたちだったらしい」

 クロウは顎に手を当てて、話を思い出しながら続ける。

「その者たちも数年をかけて少しずつページを読み進めていき、五十ページほどの短めの精霊記を読み切っただけなのだ。見たところアウルの読んでいた精霊記は百ページに近い厚さで、それを五日で読破するなど常識外れだな」

 これよりも薄い精霊記を読むだけで、数年も時間をかけなきゃいけなかったのか。
 それも達成できた者たちは魔力を多く持った一流の魔法使いたちだったという。
 ページ数が増えればそれだけたくさんの魔力を食われて、読むのが大変になるはずなのに、どうして百ページ近い精霊記を五日で読めたのだろうか?
 アウルは自分の体を見下ろしながら首を傾げて、一方でクロウは顎に手をやったままぶつぶつと独り言をこぼし始めた。

「魔力をあまり食わない精霊記だったのか……? いや、そこに例外はないはず……。だとしたら考えられる要因は……」

 瞬間、ハッとした顔でクロウが黒目を見開いた。
 なにかに気付いた様子を見せた後、すぐにクロウは執務室の扉に手をかける。

「至急やるべきことができた。それとその精霊について屋敷に周知しておく必要がある。アウルとそこの精霊よ、ついてこい」

「は、はい」

「ガウガウ!」

 クロウがなにに気付いたのかはわからなかったけれど、屋敷の人たちにフェンリルを紹介しなければならないのは理解できたので、アウルは慌ててクロウの後を追いかけたのだった。