自分に契約精霊が宿った。
こんなにかわいくてもふもふな生き物に懐いてもらえたなんて最高の出来事である。
まさか前世で夢見ていたペットを飼うという目標が、こんな形で実現できるとは思わなかった。
けれど思いがけず宿ってしまった契約精霊は、果たしてこの屋敷にいてもいいのだろうか?
この屋敷はあくまでクロウのものだし、当然精霊だってご飯を食べるはず。
「このこ、ここにいてもいい?」
「無下に追い出すわけにもいくまい。人間に対する敵意もなくアウルにも非常に懐いているしな。むしろ外に放り出して野生化する方が却って不都合だ」
屋敷の主であるクロウからお許しが出た。
これからこの屋敷で一緒に生活を送れることになり、アウルはよかったねと白狼のもふもふ頭を優しく撫でた。
となれば、なにか呼び名が必要である。
白狼のままでは呼びづらいしかわいそうだし、名前らしい名前を考えてあげなければならない。
確か絵本のタイトルは【ゆきやまのフェンリル】だったはず。
であればここはシンプルに……
「フェンリルしゃん。あなたはこれからフェンリルしゃんでしゅ」
「ガウガウ!」
どうやら呼び名をもらえて喜んでいるようで、フェンリルはアウルの脚にぐりぐりと体を擦りつけ始めた。
そんな中、クロウが目の前で屈んで視線を合わせてくる。
「本当に体に異常はないか? 噂の通りなら、魔力をふんだんに食われているはずだが……」
「はい、だいじょうぶでしゅ」
この通りと言わんばかりに両腕を広げてみせる。
するとクロウは「よく顔を見せてみろ」と言って、アウルの顎を指で持ち上げた。
間近からジッと見つめられて、その真剣な眼差しに緊張感が迸る。
「顔色に異常は見えない。魔力枯渇による意識の朦(もう)朧(ろう)も窺えない。本当に体調に問題はなさそうだな」
精霊記を読んだ影響が見えないことに、いまだに疑問を抱いている様子だったが、なにはともあれアウルが無事でクロウは胸を撫で下ろしていた。
次いでやや視線を落として、申し訳なさそうに言う。
「すまなかった。まさか精霊記がこの執務室に置いてあるとは知らず、危険な目に遭わせた」

