転生して捨てられたボク、最恐お義兄さまに拾われる~無能と虐げられたけど辺境で才能開花⁉~


 大きさは大型犬よりも少し大きいくらい。
 雪のように真っ白な毛は汚れひとつなく、身じろぎするたびに空気を含むように揺れて、その〝ふわふわ〟さが見て伝わってくる。
 サファイアのような青目はどこまでも澄んでいて、見ているこちらの意識が吸い寄せられる神秘さすら感じた。
 アウルが呆然としていると、不意にクロウが動き出しアウルのもとへ駆けつける。
 瞬きひとつの間にクロウに抱えられていて、気が付くと巨狼から距離を取るように執務室の角へ後退していた。
 こちらに危険が及ばないようにするためか、クロウが体の陰に隠してくれる。
 そして彼は白狼に警戒の眼差しを向けながら尋ねてきた。

「なぜ突然こんな狼が出てきたんだ……。なにか心当たりはあるかアウル?」

「……わ、わかりましぇん。ほんをとじたら、ほんがひかりだちて……」

 視界を奪われた後、数秒後にはあの巨狼が目の前に立っていた。
 特別なにかをした覚えはない。
 ふたり揃って緊張した面持ちで構えていると、白狼が耳をしゅんと垂らして高い鳴き声をこぼした。

「クゥン……」

「敵対心、はなさそうだな。いやむしろ……」

「なんだか、さびちそうでしゅ」

「あぁ。俺たちに距離を取られて落ち込んでいる、ということだろうか……?」

 申し訳なさそうに耳を垂らす姿が、なんとも悲しそうである。
 見る限り攻撃してくる気配もなく、ついには敵対の意思がないことを示すためかペタンとお座りまでしてしまう。
 とりあえず危険はなさそうだと判断したクロウは、アウルを床に下ろして机の陰に潜ませた。
 そしてひとりで狼のもとへ歩み寄っていく。
 すると白狼は近づいてくれたことが嬉しかったのか、尻尾をぶんぶん振りながらクロウの脚にぐりぐりと頭を擦りつけた。

「人に慣れているようだな。というか慣れすぎている」

「ぼくも、さわってもいいでしゅか?」

「あぁ。ただし気を付けるんだぞ」

 クロウに甘えている姿がなんとも可愛らしく見えたので、アウルも触りたくなってしまった。