青い背景に白い狼のようなものが描いてある絵。他のものと違ってとっつきやすい印象を感じる。
しかし本棚の最上段にあるため、アウルの身長では取れそうになかった。
なんとか足をピンと張って、短い右腕をぐっと伸ばしてみるけれど、届く気配はまるでない。
やろうと思えば本棚をよじ登ることもできるけれど、それは子供が本棚で怪我をする一番の要因だとどこかで聞いたことがある。
本棚が倒れて下敷きになるのはさすがに勘弁だ。
そう思いながら遥か高くにある本を悩ましげに見つめていると、不意にアウルの視界に影がかかった。
後ろを振り返ると、そこにはいつの間にかクロウが立っていて、相変わらずの無表情でアウルのことを見下ろしている。
気付かないうちに物音を立てて怒らせてしまっただろうか、と不安に思っていると、予想していなかったことをクロウから言われた。
「どれを取りたいんだ」
「えっ?」
「上の方の本を取ろうとしていただろう。どれが気になっているんだ」
どうやら、代わりに取ってくれるらしい。
思いがけない提案につい固まってしまうが、すぐに我に返って目的の本を指で示した。
「あの……あおいやちゅ」
すかさずクロウは背表紙に絵が描いてある本を最上段から引き抜き、なにも言わずに近くの本の山に立てかけてくれる。
まさか取ってくれるとは思わず放心していると、クロウはすぐに机に戻って仕事を再開させた。
ぶっきらぼうで無愛想に見える青年の、確かな優しさを見てアウルは温かい気持ちになる。
「あいがとう、ございましゅ」
「散らかされたらたまったものではないからな」
冷たい口ぶりで血染めの貴公子なんて恐れられているけれど、やっぱりこの人は心が優しい。
改めてこの人に拾ってもらえてよかったとアウルは心中でしみじみと感じる。
そして取ってもらった本が、思った通り子供向けの絵本だったので、これを読むことに決めて部屋に持って帰ろうとした。
しかし予想外なことに、絵本がとてつもなく重たかった。
(ぜ、全然持ち上げられない……! これはさすがに部屋に持って帰れないな)
軽々と片手で掴んでいたクロウがすごく見えてくる。
ともあれ子供のアウルが持って歩くにはなかなかに難しい絵本となっていた。
そうして四苦八苦している様子をクロウに見られていたようで、彼がまたひとつ提案をしてくれる。
「持ち帰るのが面倒ならここで読んでいけ」

