思いがけない言葉を受けて、ぽかんとクロウを見上げてしまう。
呆然とする中、クロウは手短にロビンに指示を出した。
「魔力操作の才能があって、魔道具や魔法薬の製作で役に立つ可能性はある。魔法は座学だけに留めておき、魔力操作に重点を置いて指導を続けろ」
「かしこまりました、クロウ様」
そう言うと、クロウは早々に立ち上がって部屋を後にしようとした。
アウルはその後ろ姿をぼんやりと見つめながら、心の中で激しく戸惑う。
(卓越した魔力操作の才能?)
明らかに無理に捻り出したような理由。
まるでアウルをここに留まらせる〝口実〟を作った感じに聞こえた。
魔力に色がない無属性の時点で、魔法関連の活躍は望み薄だというのに。
それに卓越した魔力操作の才能があったところで、できるのはせいぜい少し複雑な魔道具や魔法薬の製作くらいだ。
屋敷に住まわせて従者もつけて、手塩にかけて育てるほどの価値はないと思える。
それでもアウルを追い出そうとしなかったのは……
(この人、やっぱりすごく〝優しい〟んだ)
血染めの貴公子として恐れられているけど、根底から温かみのある優しさを感じる。
でなければ魔物から命を助けてくれるはずもないし、見知らぬ子供を屋敷で育てようなんて考えないはずだ。
その優しさを表に出さない、あるいは感情をさらけ出すのが苦手なのか、周囲からは怖がられてしまっているけど。
クロウの密かな優しさに気付いたアウルは、短い手足で懸命に立ち上がり、部屋を出ていこうとするクロウにタタタッと追いついた。
その気配を察して振り返る彼を見上げながら、アウルはこれまでの分も含めてお礼の言葉を告げる。
「……あい、がとう。えっと……クロウ、おにいしゃま」
「礼を言われる筋合いはないはずだがな」
相も変わらず感情を感じさせない視線を向けてきて、クロウは部屋を後にしたのだった。

