転生して捨てられたボク、最恐お義兄さまに拾われる~無能と虐げられたけど辺境で才能開花⁉~

 新しい屋敷での生活は実に穏やかで快適なものだった。
 身の回りの世話は侍女のロビンがすべてやってくれる。
 文字の読み書きもゆっくり丁寧に教えてくれて、できるたびに優しく褒めてくれる。
 気分転換にと部屋から連れ出して屋敷内を散歩させてくれるのもとても楽しい。
 他の使用人たちとすれ違うたびに笑顔で手を振ってくれたり甘やかしてくれて居心地がよかった。

(実家でのあの扱いとは本当に雲泥の差だ。むしろあそこを追い出されて本当によかったかもしれない)

 ただそれも、あの冷徹と噂の血染めの貴公子に拾ってもらえたからである。
 改めてクロウには感謝しなければならない。
 ちなみに屋敷で過ごしている間、クロウはほとんどこちらに接触はしてこなかった。
 いつも執務室で仕事に追われているようで、屋敷内ですれ違ったのも数える程度である。
 この危険区域に指定されている領地を任されたばかりで多忙を極めているのだろう。
 ただ使用人たちの話を聞く限りでは、彼はそもそも屋敷の人間と触れ合うこと自体が少ないそう。
 クロウを怖がっている使用人も何人かいるため交流はほとんどないとか。
 使用人の多くがエグレット公爵家の屋敷からクロウについてきた人たちらしいが、生家にいた頃からクロウは人付き合いをあまりしていなかったという。
 アウルとしてはまた改めてお礼を言う機会が欲しいと思いつつ、気付けば二週間が経ち、ある程度文字の読み書きと計算ができるようになってきた。
 たった二週間で勉強がここまで進んだ要因は、ロビンの教育の手腕と、白鳥翼という大人の意識がアウルに宿っていることの賜物である。

「アウル様は本当に物覚えがいいのですね! 今は五歳とお聞きしておりますが、大人と変わらない理解力があると思います!」

 勉強が上手くいくたびにロビンに褒めてもらって気分がよかったが、たまにドキッとするような発言もされて幾度も冷や汗をかいてしまった。
 いまだに異世界転生人がこの世界や国でどういう扱いを受けるのかわかっていないため、その事実は誰にも話していない。
 実年齢のことは当然伏せてあり、五歳になったばかりだとロビンたちには話してある。
 ともあれ読み書きと計算がある程度できるようになったので、アウルの教育は次のステップに進むことになった。
 そう、ロビンが侍女に選ばれた理由でもある、魔法に関する勉強の始まりだ。