転生して捨てられたボク、最恐お義兄さまに拾われる~無能と虐げられたけど辺境で才能開花⁉~


 一面大理石と彩色タイルでできた広々とした部屋。
 天井は高く、そこから真(しん)鍮(ちゅう)のシャンデリアが垂れ下がっている。
 窓にはステンドグラスがはめ込まれ、日中の光を赤や青に変えて部屋に流し込んでおり、香を焚いているのか部屋には爽やかで甘い香りが満ちている。
 重厚な赤の絨(じゅう)毯(たん)が中央を走り、視線を誘導された先には天蓋付きの大きなベッドが待っていた。

(な、なんだこの部屋……! めちゃくちゃ広くて豪華なんだけど)

 一目見てわかる絢(けん)爛(らん)さに、アウルは圧倒されて思わず目を覆ってしまう。
 こんな豪華な部屋を与えてもらっていいのだろうか。
「元々は前の領主一家が住んでいた屋敷で、ここはその娘さんの部屋だったそうです。って、言ってもわかりませんかね」
 見た目三歳児のアウルに詳しい説明をしても、混乱させてしまうだけだと思ったのか、ロビンは申し訳なさそうに説明を切る。
 次いで目線を合わせるように屈んで、柔らかい表情で尋ねてきた。

「もしお気に召しませんでしたら、他のお部屋もご用意できますよ」

「ううん、ここがいい」

 あまりの豪華さに少し圧倒されていただけで、嫌な気持ちは微塵もない。
 むしろぜひともこの部屋をもらいたかった。
 実家にいた時は最低限の部屋は与えてもらっていたけど、ヒルマイナが来てからは自室を物置部屋に移されておもちゃも私物も取り上げられたからな。
 あの頃の質素な部屋に比べたらなんとも贅沢である。
 そして食事についても同様の衝撃を受けることになった。
 早くも夕(ゆう)餉(げ)の時になり、ロビンが私室に夕食を運んできてくれる。

「おいちそう……」

 ふっくらともちもちに焼き上げられたパン。
 香ばしい羊の肉が包まれたパイに、蜂蜜とバターで照り輝かせるようにソテーしたチキン。
 みずみずしくて新鮮なサラダと香草のスープで栄養もばっちり。
 デザートとしてシナモンシュガーを振りかけたトロトロ食感の焼きリンゴまであった。
 その魅惑的な光景と香(かぐわ)しさで、アウルは自然と顔を綻ばせてしまう。
 実母のマーレットがいた頃でもここまで豪華なメニューは食べたことがない。
 さらに継母のヒルマイナが来てからは食事の品数も量も制限されて、それはそれは質素なものになっていた。
 小麦ではなくライ麦で作られた硬くて粗悪な黒パン、具材もほとんどなく水に近い極薄の野菜スープ、タンパク質と与えられるのは当然肉や魚ではなく安価な豆で作られた味気のない豆粥。
 だからこれだけ豪勢な料理を見たのは、アウルとしては生まれて初めてである。