実家では虐げられるばかりの毎日だったからまったく気が付かなかった。
童顔で目がつぶらで大きいから、将来は中性的な美少年になるだろうとは思っていたけど。
(にしても前世を合わせても生まれて初めて「かわいい」なんて言われたぞ)
嬉しいような恥ずかしいような気持ちになって、使用人たちから顔を背けてしまう。
それでもなんとか皆の方を再び向き、遅ればせながら挨拶を送った。
「ア、アウルでしゅ。よろしく、おねがいしましゅ」
直後、「キャー」という歓声が使用人たちの間から迸った。
まさに熱烈な歓迎を受けた後、しばらく使用人たちにチヤホヤされて、やがてストークがその場を収めてくれる。
そして従者については立候補者の中から、読み書きと計算だけではなく魔法の知識もあるロビン・シャトルコックという使用人が選ばれた。
アウルに魔法に関しての教育も施せるように、という采配らしい。
「ロビンと申します。これからよろしくお願いいたします、アウル様。至らぬ点があればお申しつけください」
ロビンは使用人の中では若い十六歳の少女で、若葉色の長髪とエメラルドのように透き通った緑目が特徴的だ。
年相応の童顔と小柄な体(たい)躯(く)から頼もしさはあまり感じないが、使用人たちの間ではかなり信頼されている逸材だという。
平民の家の子にもかかわらず親が行商人で、読み書きと計算ができたり。
手先が器用で刺繍や編み物も名家の令嬢並みだったり。
そして行商人の親元にいた頃、商品の魔法教本を頻繁に読んでいたことで魔法も実用的なレベルで使えるらしく、屋敷の至るところで引っ張りだこなのだとか。
そんな重要な人物に侍女になってもらって、アウルは少し罪悪感を覚えてしまう。
同時に元の家では付きっ切りで面倒を見てくれる従者がいなかったため、初めての侍女に戸惑いを感じた。
しかしそんな困惑もまだ序の口である。
屋敷に通された後、部屋を与えてもらえることになりさっそくロビンに案内される。
彼女に手を引かれた先で待っていたのは、あまりにも驚愕の光景だった。
「ここが、ぼくのへやでしゅか?」
「はい。今日からここで寝起きと着替え、そしてお勉強をしていただきます」

