「使用人の中からひとり、この子供に従者をつけろ。可能なら字の読み書き、計算を教えられる者が望ましい」

「も、もしや、屋敷でこの子供を育てるおつもりですか!?」

 思わぬ提案にストークが驚いた様子を見せて、同様にアウルも困惑していた。
 確かに今の発言からして屋敷で育ててくれる感じに聞こえた。
 字の読み書きや計算といった教育面も考慮してくれている様子。
 そう提案した理由をクロウは淡々と語った。

「貴族の家の出自ならば、なにかしらの才能に恵まれている可能性が高い。真っ当な教育を施せば領地に有益をもたらす人材になるかもしれないからな」

「それはそうかもしれませんが……」

「まあ念のために王都と教会への届け出はしておけ。望みは薄いと思うがな」

 将来性を期待しての保護。
 それに説得力はあったものの、いきなりのことすぎてやはりストークは戸惑っている。
 そんな彼を意に介さず、クロウはアウルに黒い目を向けてきた。

「貴様、名前は? よもや自分の名前すらわからないとは言うまいな」

「ア、ウル……。アウル、でしゅ」

「アウルか。俺の名前はクロウだ。クロウ・エグレット。貴様も今日からエグレットを名乗れ」

「えぐ、れっと……?」

 クロウ……クロウ・エグレット。
 その名前には聞き覚えがある。
 確か父のドレイクが情報誌を読んでいた時のこと。

『またエグレットの子息の記事か……。〝血染めの貴公子〟のクロウから世間は目が離せんらしいな』