このクロウという青年、なかなかに鋭くて侮れない。
 よもや外見だけで貴族の家の出身とバレるなんて。

「そして名家の出自なら、子供がひとりで外に放置されている状況もそこまで不思議なものではない」

「〝勘当〟、ですか?」

「家督争い、独特の家訓、庶子嫡子のいざこざ……なんでもいい、名家の生まれならなにかしらの理由で家を追い出される例は多々あるからな」

 それに関しても的を射ていた。
 より正確には継母の歪んだ感情によって罠に嵌められたわけだが、形としては勘当で家を追い出されたのでクロウの予想は的中している。
 次いで彼は無感情な眼差しをアウルに向けると、心なしかわずかに顔をしかめて続けた。

「さすがにこの年齢の子供を、魔物がひしめく森に置き去りにするのは明らかな悪意があると見て取れるがな」

「魔物の餌食になってしまってもいいという、未必の故意的な考えを持っていたとしたら、ブランチの森に放置するのも納得できますね。ともあれ勘当によって行き場を失くした子の可能性はとても高いです」

 ストークはアウルの衣服の裾に手を伸ばし、馬車から引き摺り降ろされた際についたと思しき土を払ってくれる。
 それが済むと今一度クロウの方を振り返り、ある提案をした。

「どこかの孤児院に届けましょうか? 領内に孤児院はありませんが、近隣の別領地で孤児を請け負っている場所を知っております」

「孤児院か……」

 クロウは顎に指を添えてしばし考え込む。
 その時、彼が横目にこちらを窺ったような気がした。
 やがて考えがまとまったらしく、相変わらず無感情な顔でストークに告げる。

「……しばらくうちの屋敷に置く」

「えっ?」