助けてもらって心配までされた手前、嘘を吐くというのは大変心苦しい。
しかし本当のことを話せば、最悪あの家に連れ戻されるかもしれないと思った。
実家がわかっているならそこに帰すべきだと、普通の大人ならそう考えるはずだから。
悪い予感を抱いたアウルは、申し訳ないと思いつつかぶりを振った。
「わかん、ない……」
「自分の親がどこにいるのかわからないのか。どうしてこんな場所にいるのかもわからないのかい?」
「……」
言葉の意味がわからないと言わんばかりに、困り顔で黙り込んでいると、鏡写しのようにストークが困った顔をした。
「かなり幼いように見えるので、自分の置かれている状況がわかっていないのかもしれませんね。クロウ様が駆けつけた時にも他の人物の姿はなかったのですよね?」
「あぁ、この子供と魔物だけだ。離れたところに襲われた親が倒れている可能性もあるが、魔物には返り血ひとつついていなかった」
「でしたら本当にたったひとりでこの森にいたということになりますね。なんとも不可思議な状況です」
なんとかごまかせたと、アウルは心中で胸を撫で下ろす。
次いでストークが周囲を見渡しながら、眉を寄せて頭をかいた。
「道に迷って辿り着けるような場所でもないはずなのですがね……。そもそもこんな小さな子供をひとりで出歩かせている時点でかなり不自然ですが」
「まあ、憶測でしかないが、この子供の置かれている状況については大方の予想はつく」
「……と、言いますと?」
「かなり細身だがそれなりに上等な衣服を着ている。とても平民とは思えない装いだ」
「まさか貴族の家の出自ということですか?」
ドキッと心臓が跳ね上がる。

