白いチュニックの上にモスグリーンのチェスターコートを羽織っており、ぴったりとした脚衣をはいている。
呼び方からして黒髪の青年の従者と思しき灰髪の男性は、息も絶え絶えになりながらクロウと呼んだ青年に声をかけた。
「突然馬車から飛び出していかれて、いったいなにが……」
「魔物が暴れている気配を感じたので大人しくさせた。ついでにちょっとした拾い物をした。と言うには少々無理がある大きさかもしれないが」
「拾い物……?」
アウルはクロウの陰に隠れる形になっていたため、灰髪の男性は顔を覗き込ませるように見てくる。
そしてばっちりと目が合うと、彼の目が大きく見開いた。
「こ、子供……!? なぜこのブランチの森に、こんな幼い子供が……」
「さあな。俺はただ子供を襲っていた魔物を退けただけだ。任されたばかりの領地で死人が出るなど勘弁だからな」
クロウは冷たい声音でそう言うと、不意にアウルから目を逸らす。
任されたばかりの領地。その言葉からクロウという青年が、このマグノリア領を任されたどこぞの貴族様ということがわかった。
次いで彼は従者を見ながら、促すように首を動かして命令を出した。
「子供は好かん。貴様が応対しろストーク」
「は、はい」
ストークと呼ばれた男性はすぐに頷き、アウルと同じ目線の高さになるように屈んでくれる。
青年の方とは違って、ストークは親しみやすい雰囲気を感じた。
「君、どうしてこんな場所にいるんだい? お父さんやお母さんは?」
「あっ、えっと……」
改めてそう問いかけられて言い淀(よど)む。
(実家のことを話すべきだろうか?)

