転生して捨てられたボク、最恐お義兄さまに拾われる~無能と虐げられたけど辺境で才能開花⁉~

 咄嗟に目を開けると、声のした方から炎の玉が飛んできて、アウルに飛びかかろうとしていた狼を空中で撃ち落とす。

「ギャンッ!」

 狼は火に巻かれて地面でのたうち回ると、焦げ臭い空気を残しながら逃げ去っていった。

(今のは、魔法……?)

 なにが起きたのかわからなかったアウルは、戸惑いながら後ろを振り返る。
 するとそこには、炎の魔法を撃ったと思しき〝青年〟が、手を構えたまま佇(たたず)んでいた。

「任されたばかりの領地で、まさかこのような拾い物があるとはな」

 森の暗さよりもなお黒い髪。闇夜のように光がなく感情を感じさせない黒目。
 高い上背を包むのは薄手の生地の黒いフロッグコート。
 佇まいだけでも絵になるほど眉目秀麗なその青年は、冷たい目つきでアウルを見据えていた。
 無感情な眼差しと表情から、その青年に対する第一印象は〝怖い〟だった。

(この人が、助けてくれたのか……?)

 どれくらい無言で見つめ合っていただろう。
 やがて気まずい沈黙を破るようにして、また別の男性の声が青年の後方から聞こえてきた。

「クロウ様ー! いかがなされましたかー!」

 茂みをかき分けてやってきたのは、グレーの長髪を後ろで一本にまとめた二十後半辺りの男性だった。