転生して捨てられたボク、最恐お義兄さまに拾われる~無能と虐げられたけど辺境で才能開花⁉~

 実家へは絶対に戻れない。最悪今度はドレイクかヒルマイナが直接手を下してくる可能性がある。
 父方の祖父母のもとに行くのも得策ではないだろう。
 蛙の子は蛙と言わんばかりに、父方の祖父母も実力主義で才能なしのアウルを蔑んでいたから。
 母方の祖父母に関しては資金提供以外にダスター家とのやり取りがほとんどない状態だったため、領地の場所や本人たちの人柄などなにもわかっていない。
 一か八かで頼るならそこだけだが、どのようにしてここから辿り着けばいいかそこがあまりにも大きな問題だった。
 と、悩んでいるその時……

「グルルゥゥ……!」

 茂みの裏から獣の声が聞こえてきた。
 咄(とっ)嗟(さ)にそちらを振り向くと、たった今姿を現したと思(おぼ)しき〝黒い狼〟がアウルを睨みつけていた。
 頭には歪(いびつ)な形の角が生え、尻尾の先端には漆黒の炎が轟(ごう)々(ごう)と揺らめいている。

「ま、もの……!」

 アウルは初めて見る魔物に恐怖する。
 話に聞いたことがあっただけで、実際に目にするととてつもない迫力と殺気を感じた。
 前の世界にいた時も、これだけ明らかな殺意を持って迫ってくる生物なんて出会ったことがない。
 あまりの恐怖に身が竦み、アウルはへたり込んでその場から動くことができなかった。

「たしゅ、けて……! だれか、たしゅけて……」

 助けを求めるその声も、森のざわめきに虚しくかき消されてしまう。
 そして黒い狼は痺れを切らし、獰(どう)猛(もう)な大口を開けながらアウルに飛びかかってきた。

(やっぱりこっちの世界でも、悲しい人生だったな)

 家族に虐げられ、森に捨てられ、最期には魔物の餌食。
 自分の不幸体質は死んでも治らないのだと、アウルは後悔しながら目を閉じた。
 瞬間――

「【小さな(リトル・)太陽(フレア)】」

 後方から人の声が聞こえた。