焼いている途中からも感じていたが、石窯から取り出した瞬間、甘美な香りが厨房に充満する。
「はぁぁ、おいちそー……!」
ちゃんと膨らんでくれるか不安だったけれど、スポンジケーキは見事に想像に近い出来栄えになっていた。
焼き目は香ばしく、生地を押すとふわっと軽く押し返される。
失敗しなくて本当によかった。
「よい香りだな。それに今まで見てきたフルーツケーキやタルトとも違う感じだ」
「これにクリームをぬってかんせいでしゅ!」
スライスしてデコレーションするのは祝宴の直前なので、それまでは氷をパンパンに詰めた氷室で寝ていてもらうことにする。
なんでもかんでも冷やすのが大事なお菓子作りにおいて、最大の功労者は実はフェンリルなのではないかとアウルは密かに思った。

