後は型に入れて石窯で焼くだけだが、その時アウルの横で寝ていたフェンリルが匂いに釣られて起きた。
そしてボウルの中にある生地を見て、碧眼をうるうるさせながら右の前脚でちょいちょいとアウルの袖を引っ張る。
「クゥゥン……」
「このままたべたらおなかこわしゅ。やけるまでまってて」
食べたいよぉ、という意思を視線に乗せて送ってきたが、さすがにこのままではさしもの精霊とはいえ体調に差し支える可能性がある。
焼く前のケーキ生地が美味しそうに見えるのは同感だが。
フェンリルにはこれから氷を出してもらわなければいけないので、大人しく待たせておいて生地を石窯へと投入した。
焼き時間は三十分ほど。
その間にスポンジケーキに着せる純白のウェディングドレス……ホイップクリームを仕上げてしまう。
「フェンリルしゃん、よろちくね」
「ガウ!」
契約精霊であるフェンリルに魔力を注ぎ、ボウルに氷を生成してもらう。
そのためのボウルが棚の上にあったので、アウルはつま先立ちをしながら腕を伸ばし、懸命に子供の体をぴょんぴょんと跳ねさせた。
さすがに届かなそうだと思ったその時、不意に足元が地面から離れて棚の上のボウルに手が届く。
こちらの様子を見ていたクロウが、いつの間にか後ろにいてなにも言わずに抱え上げてくれていた。
いつかの精霊記を本棚から取ってくれた時のことを思い出して思わず笑みがこぼれる。
無事にボウルを取った後、前と同じようにクロウに手伝ってもらいながら大量のホイップクリームを仕立てて、ちょうど終わったタイミングでスポンジケーキが焼き上がった。

