「一緒にケーキ? 俺とか……?」
珍しくその表情に変化があり、目をぱちくりと開閉している。
ものすごく驚いている顔。
無理もない。あの血染めの貴公子がお菓子作りに誘われるとは考えてもいなかっただろうから。
「ホイップクリームづくりのときも、いっしょにやってたのちかったから……ケーキもいっしょに、つくりたいでしゅ」
「……」
クロウは心なしかたじろぐように、こめかみをピクピクと動かす。
自分には似合わないと思っているから、それはどうなんだと考えているのだろう。
ホイップクリーム作りの時は、散らかされたらたまったものではないから手を貸してくれただけだったし。
なによりホイップクリームがなにかわかっていなかったので、お菓子作りに手を貸したという気はまるでなかったはずだ。
でもアウルとしては、ぜひともまた一緒にお菓子を作りたいと思っている。
クロウと一緒にホイップクリーム作りをしたのが楽しかったから、またなにか一緒に作りたいというのも事実だが……
一緒にケーキ作りをすれば、きっと周りからの視線を変えることができると思ったから。
使用人たちの中には、いまだにクロウに畏怖の気持ちを抱いている人が少なからずいる。
だからクロウが一緒にケーキ作りを頑張って、それを祝宴の場で皆に振る舞うことができれば、使用人たちが抱いている畏怖が完全に抜け切るのではないかと考えた。
(これを機に、少なくとも屋敷のみんなとは打ち解け合ってもらいたいな)
そこまでわかってのことか、あるいはアウルからの誘いを無下にしたくないという気持ちからか、クロウは渋々と頷いた。
「……わかった。それが祝いになるのだったら、一緒にスポンジケーキなるものを作ろう。ひとりでやらせるわけにもいかんしな」
「はい! とびきりおいちいのつくって、みんなにたべてもらおう、クロウおにいしゃま!」
ふたりでケーキを作ることが決まり、ますます祝宴が楽しみになったのだった。

