「ほ、ほんでよみまちた」
「アウルの読む書物は謎の知識ばかりが書かれているな。俺の記憶なら、執務室の本の中にそういった記載のものはなかったはずなんだが」
さすがにそろそろこの言い訳も苦しくなってきたか。
あの執務室にある本は、元は前住人の領主の持ち物で誰にも全容は把握されていない。
だから誰も知らないような知識を持っているとしても、そこから引っ張り出したと言えば怪しまれることはなかった。
しかし最近はクロウも手隙に執務室の本を読むようになったようで、この言い訳も危うくなってきてしまった。
こうなれば別の言い訳を用意するしかない。
「ま、まえのおうちにいるときによんだやつかも」
「ダスター家にいた頃に仕入れた知識か。たくさんの本を読んでいるから知識がごちゃごちゃになっていたということか」
それならまあ、とクロウはぎりぎりで納得してくれた。
なんとかごまかすことができたけど、これからは前世の知識をほいほい出すのはやめておこう。
またぞろ怪しまれて別の世界からやってきたことがバレてしまう可能性があるから。
ともあれ咄嗟に用意した言い訳は意外にも効果的だったようで、ロビンが感心したように言った。
「隣国のアッシュ王国の書物にはそんなお菓子があったという記録が残されているのですね。なかなかに興味深いです。ですがそうなりますと私たち使用人の中で作れる人はおりませんよ」
「そうだな。今のアッシュ王国にそのようなケーキが出回っていると聞いたこともない。買って仕入れるというのも難しそうだな」
「うーん、どうしましょうか……?」
そこはこちらに考えがある。
ホイップクリームを作りたいと思い立った時と同様だ。
アウルはぐっと短い腕を上に伸ばして、意思表示をした。
「ぼくがつくりましゅ!」
「えっ、アウル様が?」
「ぼくなら、つくりかたわかるから」
「それでしたら使用人の私たちに作り方を教えていただけたら、スポンジケーキをお作りできますよ」
「ううん、ぼくがやりたい! スポンジケーキ、じぶんでつくってみたいでしゅ! みんなのぶんもつくるから!」
珍しく自分の欲求を強く示すアウルに、他の三人は目を丸くする。

