正直自分のために用意してくれた料理ならなんでも嬉しい。
そのうえリクエストまで聞いてくれるなんて至れり尽くせりでもはや申し訳がないくらいだ。
だからここは単純に自分が食べたいものではなく、それでいてみんなにも食べてもらいたいものをチョイスすることにした。
「ケーキ、たべたいでしゅ」
「おぉ、ケーキいいですね! フルーツケーキですか? タルトケーキですか?」
「ううん、スポンジケーキ」
「ス、スポンジケーキ? って、なんですかそれ?」
ロビンは泡立て器のことを聞いた時と同じような反応を示す。
そう、泡立て器と同様、スポンジケーキという概念もこの世界には存在していない。
いや、この場合はホイップクリームと同様と言うべきか。
泡立てるという調理工程が存在していないため、泡立てから構築される料理はすべてこの世界にはないのだ。
生クリームを冷やしながら泡立てるホイップクリームも、卵と砂糖を泡立てて作るスポンジケーキも。
せっかくホイップクリームも作れるようになったことだし、ここはぜひスポンジケーキも作って見慣れたあのデコレーションケーキをみんなと一緒に食べたいと思った。
「きじがふわふわでやわらかくて、ぼくがちゅくったホイップクリームと、とってもぴったりなケーキでしゅ」
「アウル様がお作りになったあのクリームと合うケーキですか。それはすごく魅力的なケーキですね」
すでにホイップクリームの美味しさを知っているロビンは、「えへへ」と笑みをこぼしながらうっとりとする。
甘い物好きが多いここの人たちは、きっとショートケーキを気に入ってくれるはずだ。
「たんじょうびとか、けっこんのときに、たべるひとがおおいってきいた。だからおいわいのひにたべたいなって」
「なるほど。正式にこの屋敷の子供になったということで、屋敷の子供としてゼロ歳の誕生日を迎えたと言えなくもありませんからね」
そこまで深い意味はなかったのだが、しっくりくる解釈をしてくれたので結果としてはよかった。
ただ、今の話を聞いていたクロウが怪訝な表情でこちらを見てくる。
「またどこでそんなことを知ったんだ?」

