「ううん、なにもみえなかった」
「襲撃があった際、屋敷からも信号煙を放つように言ったがそれも見えないな。最後までこちら側に接触してくることはなかったということか」
次いでクロウは警戒するように目を細めながら続ける。
「隙を窺うために近くで見ていると思ったのだがな。まあ、だとしたらアウルとフェンリルのあの魔法を見て、腰を抜かして逃げ出しているか」
いまだにそびえ立つ巨大な氷山。
確かにこれだけの魔法を実際に使ってみせたら、ドレイクとヒルマイナもアウルに接触しようだなんて考えなくなる。
自分のせいで森に被害を出してしまったから、消火活動を手伝ったつもりだったのだが、結果的にとんでもない力を見せつけて追い払うことに繋がったみたいだ。
自分自身でも今回作り上げた氷山は予想以上に大きくて驚いているし。
ていうかここに置いたままでは邪魔ではないだろうか?
という疑問を口にすると、この時期なら数日で溶け切るから放っておいていいとクロウに言われた。
ともあれ、これにて森の火事は終幕。
だがこれでは犯人の存在も明らかになっていないため、思わず困り顔で呟いた。
「ほのおはきえたけど、おとうしゃまとおかあしゃまがやったしょうこ、なにもでてきてない。どうちよう……?」
「そもそも奴らの仕業だという考えがこちらの憶測でしかないからな」
状況的に見てほぼ間違いないのだが、まだ憶測の域を出ていない。
だからこそなにか証拠があればと思ったけれど、向こうから接触してくることもなく火事も完全に消え去った。
もしかして本当にただの偶然で、あの人たちはなにもしてないのだろうか?
という疑心すら湧き始めたけれど、クロウはすでになにかを確信しているように余裕のある表情をしていた。
「まあこれだけの規模の火災だ。もし人為的なものであれば、人力で引き起こした可能性は低い。証拠は自ずと出てくる。俺の予想が正しければそろそろ……」
まるでその声を合図にするかのように、兵士が遠くからこちらに向かってきた。
「クロウ様、森の中でこのようなものを発見しました!」

