小さく呟いたクロウは、消火活動をする兵士たちの後ろで魔力を練り始める。
わずかに離れたところに立っているのにもかかわらず、クロウの凄まじい魔力を肌でビシビシと感じた。
やがて魔力が溜まり切ったのか、彼は燃焼地帯の上空へと右手を向ける。
「【執念の嵐(ローカル・ストーム)】」
すると右手の平からクロウの魔力の気配が流れ出てきて、森の上空へと漂っていった。
目に見えないはずの魔力が、あまりの濃度ゆえに直感で気取ることができる。
それはまるで雲のように広がり、燃焼地帯の上空を覆いつくすと、クロウの鋭い目にキッ!と力が込められた。
瞬間、上空の魔力から雨が降り始める。
「あ、あめ……?」
しかもただの雨ではない。
まるで嵐のように地面を叩きつける大粒の豪雨である。
まさか魔法で大雨を降らせることが可能だなんて思わなかった。
局所的なものとはいえ、とてつもない水の量である。
燃焼地帯だけ嵐に晒されたような光景が目の前に広がり、兵士たちが驚愕を示した。
「なんて水量の水属性魔法なんだ……!」
「アウル様とクロウ様だけ、魔法のスケールが違いすぎる……!」
燃焼地帯の周りを巨大な氷壁が囲い、上空からは大雨が降り続けている。
今後二度と見ることがないような圧巻の景色を前に、兵士たちは思わず手を止めていた。
しかしすぐに我に返ると消火活動を再開し、クロウの大雨と合わせて水や土を懸命にかける。
全員が協力して鎮火に尽力すると、十分ほど経ったところでクロウの雨が止んだ。
見ると、視界一杯に広がっていた火の海は、シュー!と煙と音だけを残して綺麗に消え去っていた。
「消えた、のか……?」
「あの規模の火災を、たった十分で……」
アウルとフェンリルが生成した氷の大壁のおかげで、火の手もまったく広がっていない。
消火隊が到着した段階までの被害で、森の大火事を留めることができたのだった。
瞬間、兵士たちが盛大な歓声をあげる。

