もやもやとした感覚が両手を伝ってフェンリルに流れていくと、やがて白い体からほのかに光が溢れ始めた。
それでもなお注ぎ続ける。
(もっともっと……もっともっと……この規模の火事現場を氷の壁でぐるっと囲うには魔力がもっといる……)
常人離れと言われた量の魔力を、クロウに確かな才能だと認められたたくさんの魔力を、ありったけの魔力を……
アウルは契約精霊のフェンリルに与えて、力強い叫び声をあげた。
「いっけー! フェンリルしゃーん!!!」
「ワオオォォォン!!!」
フェンリルは気合を入れるように遠吠えを響かせ、開けた大口から白い冷気を迸らせた。
氷室の一件の時とは比べ物にならないほど大量かつ濃い冷気。
それは一陣の風のように燃える木々の間を吹き抜けていき、瞬く間に燃焼地帯をぐるりと取り囲む。
刹那、パキンッ!という音が鳴ると、白い冷気が一瞬にして巨大な氷壁へと姿を変えた。
火事によって高まっていたこの場の温度が、急激に低下する。
氷に火は燃え移らないため、見事に防火帯の役目を果たし、周りへの被害拡大を防ぐことに成功していた。
「な、なんという規模の魔法だ……!」
「これが精霊の力……!」
「どれだけの魔力があれば、こんな魔法が使えるんだ……」
兵士たちは消火活動を続けながら、氷山と見紛うほどの氷の巨壁を見上げて声を震わせる。
さすがに少し魔力の消費を感じて疲れていると、傍らでクロウがふと微笑んだ気がした。
「……俺も負けていられないな」

