「それがわかっていてなぜ手伝うなどと言っているのだ。外に出たら余計にアウルが危険に晒されるのだぞ。兵を何人かここに残すから、屋敷で大人しく待って……」
「フェンリルしゃんの力つかえば、もりのほのおをはやくけせましゅ! ぜったいにやくにたてましゅ!」
「それはそうだが……」
フェンリルは氷と冷気の力を扱える精霊。
火事の消火活動に確実に役立つ力だと断言できる。
アウルの体内には莫大な量の魔力も宿っているので、大規模な火災になったとしてもその魔力と冷気の力で炎を消せるはず。
「それに、ここにいたらみんながあぶないめにあう。ここにいるひとたちだいしゅきだから、まきこみたくないでしゅ」
「……」
クロウの言ったように、不審火の犯人がドレイクとその一派で、アウルを取り戻すのが目的だとしたら……
確実にアウルの周囲に危険が及ぶことになる。
森の火事に皆が気を取られているうちに、屋敷にドレイクの息がかかった無法者がやってきてアウルを攫おうとするかもしれない。
自分のせいで他の誰かが傷付くようなことは絶対に避けたいのだ。
だからクロウたちと一緒に森へ行き、フェンリルの力を使って消火活動を手伝えば、少なくとも屋敷や領都にいる人たちが巻き込まれることはなくなる。
というこちらの思惑と気持ちがわかるからだろう、クロウは悩むように顔をしかめていた。
やがて決意を固めたのか小さく頷くと、アウルの目を真っ直ぐに見つめながら告げる。
「……わかった。なら消火活動に協力してもらう。放っておけばひとりでどこかに行ってしまいかねないからな」
「はい、まかせてくだしゃい!」
「ただし俺のそばを離れるな。そしてなにか危険を感じたり気付いたことがあればすぐに伝えてくれ」
口早にそう言ったクロウに、アウルは笑みを見せて大きな頷きを返したのだった。
それからすぐに森へ行く準備を整えることになった。

