「クロウ様……?」
「……いや、なんでもない。とにかく今は対応だ。ただちに消火活動を開始する。もたもたしていたら森に潜む魔物たちが炙り出されて、一斉に領都に流れ込む可能性があるからな」
もっと言えば火や煙が領都に流れ込んでくることだってあり得る。
ブランチの森での大火事は様々な危険を孕(はら)んでいるのだ。
「兵舎や門番小屋にいる兵たちを募り、早急に集められるだけの水を馬車に積んで森へ出発だ」
「はっ、承知しました!」
ストークはすぐさま執務室を出ていく。
クロウもそれに続くように、壁かけフックから薄手のコートを取ると、袖を通しながら足早に部屋から出ようとした。
その背中に、アウルは咄嗟に声をかける。
「あの、クロウおにいしゃま!」
「どうしたアウル?」
「ぼくもおてちゅだいしましゅ!」
「……本気で言っているのか?」
クロウは一瞬だけ目を丸くすると、すぐに冷静な顔になって目の前で屈む。
次いで周りの目を気にするように声を落としながら、まだ可能性の域の話をしてきた。
「俺の予想だと、今回の森での不審火はアウルの家族がかかわっていると思われる。アウルを取り返せなかった腹いせか、もしくは計画的なものなのかは定かではないが」
それからクロウは時間がないからか、急くように窓の外を一瞥し、口早になって言葉を紡ごうとした。
「仮に後者だとしたら、奴らの計画の目的はおそらく……」
「みんなのめを、もりにむけしゃせて、そのあいだにぼくをつれだそうとちてる」
「……っ!」
同じことを考えていたとは思わなかったのか、眼前でクロウが息をのむ。

